市 町 村 合併問題 特集No.2 |
このまますすめていいのでしょうか? 市町村合併 地方交付税の1/3は減るが国の財政は改善されない 国の財政状況によってはさらに地方へ負担が強まる不安 |
国と地方の借入金残高(平成13年度) | ||
国 | 478兆円 | 71.6% |
地 方 | 190兆円 | 28.4% |
合 計 | 668兆円 | 100% |
※更埴市・戸倉町・上山田町任意合併協議会資料より |
地方の借入金を構成比率で割り当てた場合 交付税額の現状(1998年度決算) | ||||||
団 体 別 | 普通地方交付税 | 特別地方交付税 | 計 | 構成(%) | 借金推計(兆円) | 国の借金の負担率 |
都道府県 | 10兆9202億円 | 2196億円 | 11兆1323億円 | 53.4 | 101.5兆円 | 15.2% |
市 町 村 | 8兆6919億円 | 1兆0339億円 | 9兆7319億円 | 46.6 | 88.5兆円 | 13.3% |
市町村の内訳 | ||||||
大 都 市 | 7916億円 | 438億円 | 8355億円 | 4.0 | 7.6兆円 | 1.1% |
中 核 市 | 4486億円 | 292億円 | 4778億円 | 2.3 | 4.4兆円 | 0.7% |
都 市 | 2兆7931億円 | 4497億円 | 3兆2423億円 | 15.5 | 29.5兆円 | 4.4% |
町 村 | 4兆6585億円 | 5170億円 | 5兆1755億円 | 24.8 | 47.1兆円 | 7.1% |
合 計 | 19兆6123億円 | 1兆2518億円 | 20兆8642億円 | 100.0 | 190.0兆円 | 28.4% |
※ 合併が対象になっているのは都市と町村です。 |
合併して、将来、正常に財政運営ができるか、その検証をしてみました。 市町村合併は、上の表でいう都市と町村が主体なので、その影響をみてみました。 都市と町村の借入額合計は76.5兆円で、国全体の借入額668兆円の11.5%にあたります。 合併すれば地方交付税の1/3が減ります。全国の市町村が合併しても毎年6兆9千億円程度しか改善できません。国全体の借金の1%しか改善できません。 心配なのは、上小地域で合併すれば地方交付税が76億円減ります。更に、財政難を理由に減らされる可能性もあります。(「昭和の大合併の時のように、国の財政難で交付税の約束を反故にされたことがあった。合併特例債を国は地方交付税で保証するといっているが、将来のことはわからない。自主的に考えるべきだ。」佐々木信夫教授…5月23日上田商工会議所の講演) また、同教授によると「国は平成17年以降のことは何も語っていない」とも語りました。 国の借金は666兆円とも668兆円ともいわれています。国は借金の返済計画はなく、小泉総理は総務省に対して「半分の団体が交付税をもらわないでやっていける状況をどうやって地方に作ってもらうか、…総務省に具体案をつくる」ことを指示しました。 また、塩川財務大臣は「地方交付税の持つ財源保障機能を廃止することが必要」、そして、さらに「都道府県には交付税は一切出さない。市町村は残す。そうしたら地方交付税は半分になる」と発言しています。国が自らつくった借金を地方に押しつけるやり方です。 また、地方分権をすすめ道州制を導入するとしていますが、将来の仕組みや枠組みはまだ不透明です。 |
町は「市町村合併の検討が必要な理由」あげ、一方的な説明をしていますが、「合併」による、メリット・デメリットの説明は不足していると考えています。 日本共産党は、国による「押しつけ」合併には反対します。合併するか しないかは住民の意思決定で選択すべきと考えています。 住民が判断できる資料をもっと提供すべきです。 |
@「少子・高齢化時代の到来」といいますが? 大都市になるほど少子化はすすんでいる |
そもそも、少子・高齢化は市町村合併の理由になりえないものです。なぜならば「現在3人で1人のお年寄りを支えているが、30年後には2人で1人のお年寄りを支えなくてはならない」としても、「合併すれば3人で1人を支えることができるか」と聞けば、できないに決まっているからです。 高齢化率の高い市町村が幾つ集まっても率は低くなりませんし、少子化は国全体の傾向だからです。合併しなければ地方交付税を削ると脅して広域合併を進め、行政の効率化と称して人件費その他を削るリストラを図りたいという衝動が唯一の理由だからです。 「高齢化」と「少子化」は全く別の問題です。 高齢者が増えていることは、もともと長生き・長寿は人々の夢でした。日本人の平均寿命が世界一というのは、誇りです。 問題は、極端な少子化現象にあります。「少子・高齢化社会」を自然現象としてとらえていることです。1人の女性が生涯に平均して子ども生む人数が2.08人であれば、社会の人口は維持できます。日本はそれが極端に少なくなっています。 若者が住みつき子どもを健やかに育てられる環境(保育サービス・職場環境・経済的支援)を急いで解決する必要があるのではないでしょうか。 国も地方自治体も、そして社会全体で、福祉を充実していく努力するのが本来のあるべき姿です。 それを子どもを産まない父母や長生きしているお年寄りに責任を転嫁するのは許しがたいことと言わねばなりません。 |
資料1 都道府県別の合計特殊出生率と人口密度(1999年度) | ||
地域別 | 合計特殊出生率 | 人口密度(人/km2) |
全 国 | 1.34 | 340 |
東京都 | 1.03 | 5413 |
長野県 | 1.59 | 161 |
大阪府 | 1.28 | 4950 |
岩手県 | 1.52 | 93 |
沖縄県 | 1.79 | 579 |
A「日常生活圏の拡大」といいますが? みんなで活用は工夫次第(公共施設の利用) |
合併すれば便利になったり合理的になったりするものはいくつか考えられるでしょう。他市町村の公共施設利用の制限とか通勤・通学場所近くの保育園利用などは、そのとおりだと思います。しかし、例えば図書館のネットワークで広い地域の人々が相互に利用できるようになったように、合併しなくても工夫次第で解決できることではないでしょうか。上田地域広域連合で協議して決めれば、誰でも利用することができるようになると思います。 「日常生活圏の拡大」そく「合併」というのでは、東京・川崎・横浜・さいたま・船橋・千葉などは全部合併しなければなりません。つまり、合併しなくても便利に合理的に解決できるのです。 「うえだ広域」誌Vol14では、他市町村の造った道路・橋などのただ乗り利用に言及していますが、これも広域あるいは県や国が調整の役割を果たすべき問題でしょう。 問題なのは総務省の「合併推進の指針」全体が地方自治法を乱暴に踏みにじっていることです。ここでは、一部事務組合や広域連合の制度は「責任の所在が不明確となりがちであり」「迅速・的確な意思決定を行うことができず」「事業実施等に支障を生じる場合も見受けられる」といっています。 これは、『@広域行政制度の意義をないがしろにした法軽視 A広域行政組織に対する誹謗・中傷であり、国による自治体への「法外関与」 B市町村が行う事務処理方法選択の自主権限を無視』するものです。また、住民参加と住民の利益に基づかない、強権的な合併推進論です。 |
C「地方分権時代の到来」といいますが? 遠くにいる専門職より、 身近で相談できる役場職員が必要 |
「地方分権時代に対応する専門知識をもつ職員が必要」といっていますが、それを否定するものではありません。住民にとって一番必要なのは、遠い役場の中で「顔」が見えない職員よりも、近くにいて何でもすぐに相談できる職員の方が最も望まれる公務員の姿です。 職員が遠くにいれば、それだけ住民の要望を取り入れられることは少なくなり「住民が主人公」の行政は一層遠くなるのではないでしょうか。 |
D合併特例債を使って、 公共事業をするとしていますが? 1/3は自治体の借金として残ります |
合併特例債というのは、合併を促進するために、自治体が実施する事業に対して、10年間に限って国が許可する借金です。 合併特例債の総額は601億円(合併した場合の上限)。このうち借金できる額は95%で約571億円。この借金のうち国が面倒を見る分(70%)は約399億円となります。したがって、自治体はその借金の三分の一は負担しなければなりません。 上小地域8市町村全体で合併を想定した場合の16年後を推計してみました。 現在の経常経費は約390億円かかっています。16年後は地方交付税額が76億円減った約115億円が交付されます。自主財源(住民税や固定資産税など)約234億円を合わせると自治体の財源総額は約349億円になります。 結果的に41億円不足になります。この不足を、職員定員の25%削減や議員や首長など特別職定数の削減で補おうとしています。職員の400人削減で約23億円。特別職の削減で約46億円。合計約70億円の削減になります。差引約29億円のプラスになります。 ここには、事業の返済金については考慮されていません。現在の公共事業費の返済額(公債費)は年間約120億円です。これを返済に充てるとすれば大分不足することになります。 町の説明では、「税の25%や使用料、手数料、財産収入などは基準財政収入額にカウントされないため、それを加算すると106億円多い」と説明しています。 しかし、公共下水道(返済期間30年)や企業会計(返済期間30年)・開発公社の借金・債務負担行為(借金に対して自治体が負担を約束したもの)などを合わせると、綱渡り的要素が強く、極めて危険な状況が推測されます。 |
E合併特例債で、大型公共事業をしても 地元業者に仕事はまわってくるのでしょうか |
就業人口の中で公務員の占める割合は6%位といわれています。職員の4分の1は補充されず、地域全体ではその分働く場所がなくなります。 いま、不況下で失業している方がたくさんいます。これを強行すれば更に失業率は高まります。 結果的に、この地域に職がなければ、都会へ働きに出なければならなくなります。その地域は過疎化が進行することになり、地域経済の悪循環を一層すすめることになるでしょう。 |
F地方公務員の400名(25%)削減は 地域経済に深刻な打撃を与えるのでは |
就業人口の中で公務員の占める割合は6%位といわれています。職員の4分の1は補充されず、地域全体ではその分働く場所がなくなります。 いま、不況下で失業している方がたくさんいます。これを強行すれば更に失業率は高まります。 結果的に、この地域に職がなければ、都会へ働きに出なければならなくなります。その地域は過疎化が進行することになり、地域経済の悪循環を一層すすめることになるでしょう。 |
G真田町は、下水道や学校・介護施設など 整備はほぼ完了しています |
真田町は、学校の整備や介護施設はほぼ整備がされ、県下の中でも整備水準は高い方です。下水道の整備も完了しました。大きな投資を要する公共事業は当面ありません。 上田広域連合管内の下水道整備はまだ遅れています。上田市では、数百億円を投資し駅前再開発事業を実施します。そして、市民会館の建設計画もあります。合併すれば、そちらの方へお金がまわってしまい、真田町独自の事業はできなくなる可能性があります。 |
住民が公的に受ける格差をつくらず 交付税のもつ財政調整機能と財源保障機能は絶対に維持すべき 全国町村会 山本文男会長 全国町村会の山本文男会長は、3月29日の地方分権推進会議に出席して、地方交付税について「住民が公的に受けるものの格差をつくってはならないと考えますので、現行の交付税のもつ財政調整機能と財源保障機能は絶対に維持すべきであり、また、税源移譲を行っても税源の偏在構造は変わりませんから、交付税の役割は一層重要」と訴えております。 さらに、片山総務大臣が提出した「地方財政の構造改革と税源移譲について」の試案に対して「今後の具体的な検討にあたっては、人口が少なく、また、課税客体の乏しい町村の自主的・自立的な行政運営に支障が生じないよう、移譲されることとなる税源の配分や地方交付税の確保等について十分配慮いただくことが必要である」との談話を発表し、政府の攻撃に対して反撃しています。 |